《最晩年の色彩》浅蔵五十吉/《1973年のドット》加守田章二


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さて、今回数多く出品されますのが、九谷焼作家の作品です。初代徳田八十吉、三代徳田八十吉、浅蔵五十吉、須田菁華、そして武腰潤らの作品が出品されます。九谷焼とは、石川県で370年ほど前から製陶されている色絵磁器です。作風は様々で、青・黄・紫・赤・緑の五彩を用いて絵画的表現力の高い「古九谷風」のものや、青木木米の指導により、赤を基調とした唐子など描いた「木米風」もの。また、赤絵の細密画で全面に仕上げられた「飯田屋風」や、永楽和全の指導で始まった「京焼金襴手風」などが挙げられます。更に、大正期以降には、青粒(あおちぶ)と言われる細かい緑色の点を盛り上げ並べ、絵を構成する「青粒技法」や、徳田八十吉に見られる「彩釉技法」、吉田美統らに見られる「釉裏金彩・銀彩技法」など今なお発展を遂げている焼き物です。

そのなかから一点、こちらの作品についてご紹介します。

LOT.10 浅蔵五十吉「白陽彩牡丹飾壷」
H33.4×D33.8cm
高台内に掻き銘「五十吉作」、「平成十年初春」刻
共箱 1998(平成10)年作
「第37回 日本現代工芸美術」出品 東京都美術館他/1998(平成10)年
落札予想価格:★2万円~5万円

 

二代浅蔵五十吉は、父から陶技を習い、15歳・1928年(昭和3)に初代徳田八十吉に、1946年(昭和21)に北出塔次郎に師事し、九谷焼を学びました。同年に開催された第1回日展に入選以後、九谷焼の伝統を踏まえ、独自の色彩感覚で新たな九谷焼を発表し続けました。1977年(昭和52)には日展内閣総理大臣賞を受賞。1993年(平成5)には日展の顧問となり、1996年(平成8)に文化勲章を受章しました。

本作は、制作年から言っても、二代の作品でしょう。「白陽彩牡丹飾壷」は、没年である1998年に制作され、「第37回日本現代工芸美術」展に出品された作品です。当初明るい黄色や緑を基調に用いてきた作風は、プラチナを用いた銀彩へ移行し、最晩年には、「白陽」と称する白釉へ辿り着きました。本作は、大輪の牡丹の青が銀地に鮮やかに映え、重厚感があるのにどこかさわやかさを感じさせる作品です。色彩と最期まで向き合った五十吉ならではの一作でしょう。

 

また今回最後を飾るのは、1973年の加守田章二の作品です。

LOT.173 加守田章二「壷」
H24.8×W15.9cm
底部に掻き銘「章」、「一九七三」刻
共箱
1973(昭和48)年作
『加守田章二全仕事』掲載 P.286(講談社)
落札予想価格:200万円~300万円

 

LOT.174 加守田章二「壷」
H17.2×W21.2cm
底部に掻き銘「章」、「一九七三」刻
共箱
1973(昭和48)年作
『加守田章二全仕事』掲載 P.287(講談社)
落札予想価格:200万円~300万円

LOT.173は、褐色の線状の上に細かい灰青と灰色の丸が綺麗に並んでいます。魚の鱗のようにきらめいて見えるドット柄です。LOT.174もドット柄ですが、灰青と茶褐色の輪の中心部が丸く捺され大きく感覚を取って並べられています。全体は人間のデコルテ部分を抽出したような有機的な形で、対称的に口辺と側面は鋭利な形と刻文が施されています。どちらもサイズは小さいものの、1973年の加守田らしさを凝縮した作品と言えるでしょう。

コレクター心をくすぐる作品をぜひご堪能ください。

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                                  (執筆者:E)

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