秋に楽しむ陶芸オークション


先週行われました「リニューアル記念特別オークションY氏コレクション―ART JUNGLE」にご参加いただいた皆様ありがとうございました。

今回は、今週末に行われる「近代陶芸/近代陶芸PartⅡオークション」の作品をご紹介いたします。

■LOT.209 加藤唐九郎「絵志野茶碗 銘 残月」
 H9.3×D15.0cm
 高台脇に掻き銘「玄」
 共箱 1984年作
 「生誕百年記念 加藤唐九郎展」出品 日本橋髙島屋他/1997年
 『加藤唐九郎作品集』掲載 №38(日本経済新聞社)
 落札予想価格
 ¥6,000,000~¥8,000,000

加藤唐九郎は、1897(明治30)年に愛知県東春日井郡水野村(現在の瀬戸市)で生まれました。唐九郎は誰よりも陶磁器を研究し、陶芸界に多大なる貢献を果たしました。その豪快でおおらかな人柄も相まって、未だ人気が衰えることなく愛され続けている陶芸家の一人です。

元々唐九郎は作品に作者銘をほぼ入れておらず、戦後の短期間だけ「TK」(唐九郎の意味)と記していましたが、作品に作者銘を入れることの必要性を感じ、1961年から作者銘を入れ始めました。この銘が年代とともに変遷することが、コレクター心をくすぐる一つの要因かもしれません。本作のほかにLOT.208「志野茶碗」の搔き銘は「一ム」と入っています。そのころ唐九郎は、漢学者の服部担風の元を訪れ、「からっぽになって一からやりなおせ」という意味で、「一無斎」という号を贈られました。そこから「一ム才」という銘を入れ始め、翌年にはそれを略した「一ム」という銘に変え、1979年頃まで使用しました。その後、「ヤト」「六三」「陶玄」と続き、晩年に本作で使用された「玄」へと移行しました。この「玄」は、「陶(とう)玄(くろう)」の略で、丸みを帯びたものだと「団子の玄」とも呼ばれます。

亡くなる前年に作陶された本作は、紫とまでは行かないまでも、ちょうど明るくなり始めた明け方の空を思わせます。そこに絵付けで入れられた半分消えかかった月。唐九郎自身が付けた作品の銘「残月」により、作品の情感がより際立っています。

 

また今回は蒔絵の作品が多数出品されます。

 

平安時代に発達した蒔絵は、日本の漆工芸を代表する装飾技法であり、仏教美術、茶道具、文房具、日常雑器と多岐に渡ります。本オークションでも印籠、香箱、太刀掛、刀掛、箪笥、笙、文箱、硯箱等をご覧頂くことが出来、いつもとは違ったきらびやかな下見会場をお楽しみいただけます。蒔絵や螺鈿といった技法のみならず、箪笥や箱物の仕立ての妙にもぜひご注目ください。

 

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執筆者E