荻須高徳のヴェネツィア風景



こんにちは。
厳しかった寒さも和らぎ、少しずつ春らしくなってまいりました。
今年の東京の桜の開花予想は3月25日だそうですので、
そろそろお花見のプランを立てたいところですね!

さて、今週の22日(土)は近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。今回は荻須高徳の作品が3点出品されますので、そちらをご紹介いたします。

荻須高徳(1901-1986)は、愛知県生まれ。
1921年上京し、川端画学校で藤島武二に師事しました。1927年東京美術学校卒業後に渡仏し、佐伯祐三とともにパリの街頭で制作に励みます。1940年第二次世界大戦のため帰国しましたが、1948年日本人画家として戦後初めて渡仏します。以後、パリを拠点に制作に取り組みました。1956年フランス政府よりレジオン・ドヌール勲章を受章。1981年文化功労者となり、1986年文化勲章を受章。
生活感溢れるパリの街角の風景を愛し、生涯描き続けた画家です。

このプロフィールのように、荻須高徳といえばパリの風景を連想される方が多いのではないでしょうか。実際に荻須は、パリでも“Parisien de Japon”(日本生まれのパリ人)と呼ばれていたそうです。

しかし、ヨーロッパには荻須が魅了され、パリ同様に画業を通して主題とした街がもう一つありました。それは、「水の都」として名高いイタリアのヴェネツィアです。
パリで画家として軌道に乗り始めた1935年、荻須は初めてヴェネツィアを訪れました。曇りがちなパリとは異なり、暖色の建物に陽光が降り注ぐこの街の明るい雰囲気を気に入ったのでしょう。以来、戦後を中心に繰り返し滞在し、その風景を描いていきます。また、パリではヴェネツィアをテーマとした個展を度々開催しており、荻須にとってヴェネツィアは、パリの街景とともに重要な主題だったと思われます。

【 オークション終了につき画像を削除いたしました 】
lot.105

《カナル・グランデ ゴンドラ(ヴェネツィア)》
50.0×61.0cm
キャンバス・油彩 額装
1935年作
左下にサイン
荻須恵美子鑑定証書付
エスティメイト ★¥5,000,000~9,000,000

【 オークション終了につき画像を削除いたしました 】
lot.106
《サン・シメオーネ・ピッコロの階段》
65.0×81.0cm
キャンバス・油彩 額装
1957年作
右下にサイン
Kiyoshi Tamenaga鑑定証書付
「生誕110年 荻須高徳展」(2011年 名古屋松坂屋美術館)出品
エスティメイト 
★¥7,000,000~12,000,000


ヴェネツィアといえば、やはり有名なのは街の中心を流れるカナル・グランデ(大運河)ですね。lot.105とlot.106は岸にイーゼルを置いて、カナル・グランデと対岸の風景を描いたものでしょう。

lot.105ではヴェネツィアの名物、ゴンドラが運河を進む様子に焦点が当てられています。対岸の重厚な建物群と、そのオレンジ色が水面に映る情景がとても抒情的です。

lot.106は、ビザンティン様式のドーム型の屋根と、パンテオンのような古典主義的なエントランスが特徴的な、サン・シメオーネ・ピッコロ教会を対岸に描いたものです。教会の階段の下にはいくつものゴンドラが停泊しており、画面左端にはリアルト橋の一部が見て取れます。荘厳な教会のみに焦点を絞らず、それをカナル・グランデ周辺の風景の一部として捉えた構成が荻須らしいですね。「水の都」の光や風、音や匂いを観る者に感じさせる作品です。

【 オークション終了につき画像を削除いたしました 】
lot.104

《ヴェネツィア 八百屋》
50.0×61.0cm
キャンバス・油彩 額装
1937年作
中央下にサイン
荻須恵美子鑑定証書付
エスティメイト ★¥5,000,000~9,000,000

 カナル・グランデがメインストリートだとすると、lot.104は裏通りの風景でしょうか。古びた建物の一階に店を構える小さな八百屋が描かれています。荻須はパリで、観光スポットよりも素朴な裏通りを、歴史的建造物よりもどこにでもあるアパルトマンを好み、そこで暮らす人々の生活感が漂う風景を描きました。本作の舞台はヴェネツィアですが、そうした荻須の眼差しがよく表われた作品と言えます。

これら3点は19日(水)からの下見会でご覧いただけます。
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皆様のお越しを心よりお待ちしております。

(佐藤)