特集 棟方志功 墨が語り、祈る



こんにちは。
いよいよ今週、東京、名古屋、大阪、福岡など、各地で桜が開花するようです。来週にはお花見ができそうですね!

さて、今週の23日(土)は、近代美術/近代美術PartⅡオークションを開催いたします。このオークションには、棟方志功(1903-1975)の板画、倭画(やまとえ:肉筆画)、書、リトグラフが56ロット出品されます。今回は「文学」、「宗教」、「女性」の3つのテーマに沿って、出品作品の中からおすすめの作品をご紹介いたします。

● 文学
青年時代から詩歌を詠み、小説や演劇を愛した棟方は、版画家となった後も物語や詩を題材とし、絵とともに画面に文字を表わした板画絵巻を次々に生み出していきました。さらに、多くの著名な文学者たちと交流し、挿絵や表紙絵、装幀の仕事を積極的に手がけたことでも知られています。




Lot.29 《流離抄板画巻 かにかくにの柵》
紙面:41.2×32.5cm
紙・板画、手彩色 額装
左下に印、中央に吉井勇印
棟方巴里爾シール
棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
落札予想価格 ¥150,000~¥300,000










Lot.30 《流離抄板画巻 叡山の柵》
紙面:41.0×34.0cm
紙・板画、手彩色 額装
左下にサイン・印
棟方巴里爾シール
棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
落札予想価格 ¥150,000~¥300,000






《流離抄板画巻》は、歌人吉井勇が富山県に疎開していた際に詠んだ歌集『流離抄』を中心に、彼の歌集から31首を選んで絵をつけた作品です。遠く離れた京都を恋しく思う歌ですが、味わい深い文字と装飾的な絵、鮮やかな裏彩色が調和して、風雅な雰囲気を感じさせます。


● 神仏
 1936年の第11回国画会展に出品した《瓔珞譜(ようらくふ)・大和し美し版画巻》が柳宗悦や濱田庄司、河井寛次郎ら民藝運動の作家たちの目にとまり、棟方と彼らとの交流が始まりました。以後、彼らから学んだ芸術や哲学、宗教についての様々な知識が創作に反映されていきます。特に、以前から興味を抱いていた神や仏の世界についての話は、その後の棟方芸術に大きな影響を与えました。棟方が描いた神仏は、特定の宗教に対する信仰心の表出ではなく、宗教の境界を越えてそれらに対する自由なイマジネーションを表現した図像であり、それはまた、森羅万象に聖なるものを見出し、祈りを込めて描いた棟方ならではの神仏像とも言えます。



 

 

 

 

 

 

 

 

 


Lot.46《茶韻十二ヶ月板画柵                 Lot.54《釈迦十大弟子
   幾利壽人(キリスト)の柵》                羅睺羅(らごら)の柵》
紙面:65.5×28.0cm                     紙面:103.2×37.8cm
紙・板画、手彩色 軸装                   紙・板画  軸装
昭和33(1958)年作                      昭和32(1957)年作
下にサイン・印・年代 共箱                            右上に印、

棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付              左下にサイン・印・年代
落札予想価格  ¥300,000~¥500,000            棟方巴里爾箱
                             棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
                             落札予想価格
                             ¥3,000,000~¥4,500,000

Lot.46(左)は、柳宗悦が「死ぬまでにくりかえしこの一枚に眺め入るであろう」と絶賛したキリスト像です。キリスト教の教えや聖書の内容に捉われることなく、鋭い直線と幾何学模様を効かせ、主に陰刻によって仕上げています。これが茶掛として制作されたというのも驚きですね。Lot.54(右)は、ヴェネチア・ビエンナーレに出品されて注目を集めたという棟方の代表作《釈迦十大弟子》の一点。釈迦の実子と言われる羅睺羅の柔和な佇まいが、黒と白、線と面の見事な構成によって表わされています。


● 女性

「裸体の、マッパダカの顔の額の上に星をつければ、もう立派な佛様になって仕舞うんだから、ありがたく、忝(かたじ)けないんですね。それが、ホトケさまというものなのです。(中略)その額の星が、つくと、付かないので、タダの素裸の女であったり、ホトケサマに成り切ったりするという大きな世界は、うれしいものです。」(棟方志功『板画の肌』河出書房 1956年)

これは、棟方が自身の作品における神仏について述べた文章ですが、女性についての考え方を示唆するものでもあります。女性、特に裸婦は、戦後を中心に繰り返し表わされた代表的な主題です。その多くは額に星を付けられ、神や仏として、ときには生身の女性として、あるいはどちらでもあるような美しく神秘的な存在として思いのままに描き出されました。


Lot.55《大顔の柵》
紙面:31.8×30.5cm
紙・板画、手彩色 額装
昭和49(1974)年作
左下にサイン・印・年代
共シール
棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
落札予想価格
¥1,800,000~¥2,800,000






Lot.56 《光明妃図》

41.3×32.7cm
紙・肉筆 額装
左上に印、中央下に落款・印
棟方巴里爾シール
棟方志功鑑定委員会鑑定登録証付
落札予想価格
¥2,500,000~¥3,500,000

 




Lot.55(板画)とLot.56(倭絵)は、それぞれ技法は異なりますが、ともに浮世絵の大首絵の様式を取り入れ、胸から上の部分をクローズアップして描かれた女性像です。女性のふっくらとした丸顔と豊満な姿態が生命感豊かに表わされています。特に、Lot.56は、上の言葉の通り、額に星が描かれ、円窓の中に配されており、憧れの対象として描かれていることがわかります。

ここでは紹介しきれませんが、聖徳太子の逸話を板画化した《上宮太子版画鏡》シリーズ、足の速い神様を疾走感溢れるタッチで描いた《韋駄天(いだてん)図》など、ほかにもご覧いただきたい作品はたくさんあります。バラエティに富んだ56ロットをぜひ下見会でご覧ください。

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皆様のお越しを心よりお待ちしております。

(佐藤)