こんにちは。
先週の下見会にご来場いただいた皆様、ありがとうございました。
今週は3/22(水)~3/24(金)まで、近代陶芸・人間国宝・近代陶芸PartⅡ/近代美術の下見会を、3/25(土)に近代美術PartⅡ/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代陶芸・人間国宝・近代陶芸PartⅡ/近代美術のオークションを開催いたします。
複数ジャンル同日開催のため、通常とスケジュールが異なりますのでご注意ください。
(3月25日(土)オークション開催当日の下見会はありません)
下見会・オークションスケジュールの詳細はこちら
今回は3/25開催オークションの出品作品の中から、おすすめの作品2点をご紹介します。
どちらも洗練されたモノクロームの作品です。
【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】
66 高山 辰雄(1912-2007)
《月光の路》
100.0×75.5cm
絹本・彩色 額装
1987年頃作
左下に落款・印
共箱、共シール
東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定証書付
「高山辰雄 墨色の世界展」2004年
(富山県水墨美術館/「高山辰雄
墨色の世界展」実行委員会)出品
「高山辰雄遺作展 人間の風景」2008年
(練馬区立美術館)出品
落札予想価格 ¥3,000,000~5,000,000
静謐で瞑想的な心象風景は、高山辰雄の最も重要なテーマの一つです。
特に、高山自身の故郷の風景を描いたものと言われる山間の集落を中心とした風景は、円熟期に繰り返し制作されました。
本作はその代表的な作例ですが、しんとした夜、小さな集落と路、山々が満月の光に明るく照らし出されています。タイトルが《月光の路》であることから、高山の関心は前景から山へと続いていく路にあることがわかります。高山にとって路は、「人間の営みの集積と歴史そのもの」であり、そこに立つことで「過去の、そして今生きる人々の生活の喜び、怒り、悲しみ、あるいは未来のそれさえもがふと伝わってくる」註)ものでした。
本作においても、集落を優しく包み込むようにカーブを描く路を通して、高山が抱いた、人々のささやかな生活への深い共感が感じられます。
註)『画業70年 高山辰雄展』日本経済新聞社 2000年
そしてもう1点は、戦後美術&コンテンポラリーアートの出品作品から。
(下見会は終了しています)
【オークション終了につき、画像は削除させていただきました】
832 五木田 智央(1969- )
《不吉誇張人》
194.0×259.0cm
キャンバス・アクリル、グワッシュ
2008年作
裏にサイン・タイトル・年代
「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」2014年(DIC川村記念美術館)出品
落札予想価格 ¥5,000,000~8,000,000
五木田智央は、1990年代から国内外の著名なアーティストたちのCDジャケットを数多く手掛け、イラストレーションの分野で熱狂的な支持を集めてきました。2000年代に入り、ニューヨークでドローイングが評価されたことを機に絵画制作に重点を置き、世界のアートシーンにおいても注目を浴び始めます。昨年の秋には、雑誌『POPEYE』の表紙を飾り、現在は東京で新作の個展を開催中。その人気はますます広がりを見せています。
本作は、《不吉誇張人》という耳慣れない言葉がタイトルとなっていますが、どうやら五木田は始めに英語でタイトルをつけ、その後日本語に訳しているようです。本作の英語タイトルは《Sinister Exaggerator》、五木田の好きな前衛音楽ユニットThe Residentsの同名の曲からつけたものでしょうか。
本作は、五木田の名を一躍有名にした、キャンバスに白と黒、二色のアクリルとグワッシュを使って描くモノクロームの絵画の一つです。このシリーズは、既成の図像をソースとし、自らの中に浮かんだイメージを感覚的に表現したものですが、本作は曲からインスピレーションを得てイメージを膨らませたのかもしれません。具体的なモティーフをグラデーションを生かした曲線的なかたちによって表わし、それを反復することによって大画面が満たされており、画面全体を見るとまるで抽象絵画のようです。白と黒のグラデーションがつくり出すメタリックな表情が美しく、絵具のグラデーションや滴りがもたらす偶然の造形を画家自身が楽しみ、即興的に発展させていった様子がうかがえます。
皆様のご来場を心よりお待ちしております。
(佐藤)