今週は浮世絵・近代美術PartⅡオークションを開催いたします。
今回は浮世絵オークションの出品作品の中から、歌川広重《保永堂版東海道五拾三次 五十五点揃》をご紹介いたします。
「日本橋 朝之景」
Lot.363 歌川広重《保永堂版東海道五拾三次 五十五点揃》
題字付
楢崎宗重箱
エスティメイト \20,000,000~35,000,000
言わずと知れた広重の代表作です。
「浮世絵」というとこの作品を思い浮かべる方も多いかもしれませんね。
《保永堂版東海道五拾三次》は制作された当時、版木が磨滅するほどの売れ行きだったそうで、制作後に最初に摺られた「初刷り」と版木を彫り直した後の「後刷り」があります。
後刷りでは絵が加筆・修正されて、人物が増えたり、山の形が変わったりすることがあります。そういった変化もこの作品の楽しみの一つではありますが、色彩が美しい状態で残されている初刷りの作品ほど、希少性が高いと言えます。
今回の出品作品は、題字を含む56枚で構成された全揃いで、「蒲原」、「四日市」といった人気の図柄に初刷りが多いことが特徴です。また、浮世絵研究の権威として知られる美術史学者・楢崎宗重による箱書きがついています。
画帖装の扉ページとして摺られた題字です。
山種美術館にも収蔵されています。
楢崎宗重箱です。
「蒲原 夜之雪」
「蒲原 夜之雪」も初刷りです。
比較的温暖であまり雪の降らない蒲原(現在の静岡市)を雪景色として描いたこの作品は、シリーズ中でも人気の高い1点です。このように雨、雪、霧など、季節感と気象の変化を抒情的に表現したことが《保永堂版東海道五拾三次》の大きな魅力ですね。
初刷り 後刷り
初刷りの特徴はなんとこちら。画面一番右の人物の足の筋です。
後刷りではこの筋がなくなります。
「池鯉鮒 首夏馬市」
今回最も希少なものが「池鯉鮒 首夏馬市」です。
こちらは、池鯉鮒(ちりゅう。現在の愛知県知立市)宿の東の野原で開催される馬市を描いた作品。
野原には競りにかかる馬がたくさんつながれています。画面中央の大きな松の下では、馬飼や馬喰が集まって馬の値段を決めており、このことからこの松を談合松と呼んだそうです。
本作品では、松の向こう側に実在しない鯨形の丘が描かれています。これが初刷りの特徴で、大変希少と言われています。
このほかには「大津 走井茶店」なども初刷りの特徴が見て取れます。
初刷りならではの図柄やぼかしの色彩の美しさをぜひ下見会場でご覧ください。
みなさまのご来場を心よりお待ちしております。
(執筆:S)