オークションの世界について知りたい、と思って本を探してみたとき、情報がほとんど無いことに気づく・・といった経験はありませんか?
そこで今日は、今年発売されたアート関連書籍の中から、オークションについて書かれた本をご紹介します。
『現代アートの舞台裏―5カ国6都市をめぐる7日間』
サラ・ソーントン 著/鈴木泰雄 訳
ランダムハウス講談社/2009年 刊
書籍のタイトルに“オークション”の文字が入っていなくても、中にはオークションについての情報が書かれている本は、実はけっこうあるのですよね。
この本の第1章は「オークション」と題され、ニューヨークのロックフェラー・プラザで2004年11月の夜に開催されたイブニングセールを舞台に、“アートを投資や贅沢品と位置付ける”人々を描き出しています。
そこでは、
イギリス人の名オークショニアが、競売の最中にビッドする顧客の動きを把握する方法や、
オークションほど素晴らしいものはないと語る買い手達の意見、
コンテンポラリーアートを3年で買い替える人間の心理、
そしてオークションが始まる前の会場で交わされるアイコンタクトの意味・・・
といった基本的な謎が、楽しく明かされていきます。
これまでに刊行されたオークションに関する書籍との違いは、この本が一番、臨場感があること、外部からの視点で描かれているので、「アート界が面白いほどに逆説的な世界、つまり、実利主義にして理想主義的、エリート主義的にして不思議に開放的な世界」であるという魅力を感じさせるように構成されている点です。
これは本当にその通りですよね。
では、この本で描かれているオークションの世界は、本当なのでしょうか?
それは、日本では少し違う、と私は感じました。
というのも、この本を書くために取材が行われた時期は(前回のブログにも触れました)、私が以前ニューヨークにイブニングセールを見に行った時と偶然同じ頃だったのですが、この本に描き出されている世界は、当時知り得たニューヨークのアート界そのものです。
ロックフェラーセンター
しかし、日本のオークション会場に足を運ばれた方は、少し違う印象を持たれるでしょう。
特に、この章の最後にある「金銭的価値が、作品のほかの意味をほとんど根こそぎにしてしまうショー」という表現には、違和感を覚えます。
日本で開催されているオークションの舞台裏は、もっとアートへの敬意がありますし、文化的価値が大切にされています。
その実際のところをお知りになりたい方はぜひシンワアートオークションへお越しくださいませ!
(井上素子)