浮世絵オークション見どころ2 名所絵


 226ロットもの浮世絵が集まった「浮世絵オークション」が3月20日(土)に開催されます。
今日はその中から、「名所絵」というジャンルについてご紹介します。


<名所絵とは>
 江戸の浮世絵師は美人画や役者絵ばかりでなく、伝統的な山水画や風景画も手掛けました。
 浮世絵の題材としては、初めあまり一般的ではありませんでしたが、葛飾北斎(下図)や歌川広重らが、西洋から輸入された遠近図法と山水画・風景画の伝統を結び付けて豊かな芸術性を発揮し、流行するようになりました。

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Lot337 葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》
26.0×38.1cm
落札予想価格800万円~1100万円



<浮世絵の名所絵>
 特に江戸の後期には、旅行ブームに乗って「街道絵」と呼ばれる名所絵が人気を博しました。旅の体験をもとに、街道の風景を情緒あふれるイメージに描き出した作品は、現在でも世界から高く評価されています。

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Lot335 歌川広重 《保永堂版 東海道五十三次 五十五点揃》
各24.6×37.5cm
落札予想価格 500万円~800万円



<屏風形式の名所絵>
 浮世絵が誕生したのは17世紀後半のことですが、それを生みだすもとになったのは、16世紀から17世紀にかけて上方で流行した近世初期風俗画でした。
 それまで武家や富裕な町民が生活する屋敷で、公共空間を装飾する襖絵や屏風絵として描かれていた題材が、次第に私的な空間で鑑賞するようになっていくのです。

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Lot385 作者不詳《名所絵屏風 -上:和歌浦図-下:日吉山王祭礼図》
各110.0×267.0cm 紙本・彩色 六曲一双屏風
落札予想価格 1,400万円~2,000万円


 今回のオークションに出品されるlot385の名所絵屏風は、紀州徳川家の城下町として栄えた和歌浦、徳川家康とゆかりの深い滋賀の日吉大社での祭礼の各場面を、上空から見た鳥瞰図(ちょうかんず)形式で描かれています。

 和歌浦は万葉集にも歌われた景勝地で、紀州東照宮で行われる和歌祭は古くから有名でした。
日吉大社は日本全国にある日吉・日枝・山王神社の総本山として知られています。

 作者・由来など詳細は不明ですが、このように、徳川家との縁を感じさせる画題から推測すると、かつては武家にあったものでしょうか。

 細部まで緻密に描かれた、シンワアートオークションでも滅多に出品されない優れた屏風です。

浮世絵オークション日程など詳細

(井上素子)