関根伸夫の「位相絵画」シリーズ


こんにちは。
9/18(土)の近代美術/近代美術PartⅡオークション、23(木)のワイン/リカーオークションにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

さて、今週の9日(土)は、戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを開催いたします。
今回のオークションには、もの派を代表する作家の一人、関根伸夫(1942—2019)の作品がたくさん出品されますのでご紹介いたします。

1942年、埼玉県に生まれた関根は多摩美術大学絵画科に入学し、斎藤義重に師事。同大学院美術研究科に進み、高松次郎の助手も務める中で、素材を変形させることにより、物体や空間の基本構造を明らかにしようとする「位相」シリーズの制作に着手しました。1968年、「第1回神戸須磨離宮公園現代美術展」では、もの派誕生のきっかけとなった記念碑的な作品《位相―大地》を発表し、美術界に大きな衝撃を与えました。1970年の「第35回ヴェネチア・ビエンナーレ」に日本代表作家として参加した後は、ヨーロッパ各地に2年間ほど滞在し、制作活動を行います。帰国後は環境美術研究所を設立し、都市の公共空間に設置するモニュメント制作などの環境美術の仕事に力を注ぎ、「位相絵画」シリーズの制作にも取り組みました。

【 オークション終了につき、画像は削除いたしました 】

  127 
  《G15-67 2つの位置》
   65.0×53.0cm(額装サイズ80.0×68.0cm)
   ミクストメディア 
   1988年
    裏シールにサイン・タイトル・年代

    落札予想価格 ¥400,000~¥600,000



【 オークション終了につき、画像は削除いたしました 】

               132 
              《B60-3 6つの磁場》
               130.0×97.0cm(額装サイズ142.5×110.3cm)
               ミクストメディア
               1987年
                裏シールにサイン・タイトル・年代

                落札予想価格 ¥1,500,000~¥2,500,000

このたびのオークションには、「位相絵画」シリーズより6点の作品が出品されます。「位相絵画」は、1987年から1992年にかけて集中的に制作された「位相」を主題とした絵画のシリーズ。極厚の鳥の子紙にアクリル絵具を塗布し、破る、引っ掻く、切断するといった変形を加えた後、木枠にとめて金箔や銀箔、グラファイト(黒鉛)などを施すという手法で制作されました。
関根自身はこのシリーズについて以下のように語っています。

「『位相絵画』とは、画面にむかい、ひっかき描き、破り貼るという一枚の画面のなかでの変換、変形作業による絵画である。そして紙一枚の画面が、つまり表皮が増えも減りもしないように(ゴミを出してはならない)しながら僕自身の内なる欲望や感情や思想や愛を込めて、金箔や黒鉛で封印する被膜変換絵画なのである。
そして偶然や意識的な形相がレリーフ状の表面に自然還元されて、観照する人々と交感可能なメディアとなることを望む僕流の瞑想絵画なのである。」
(関根伸夫「位相の岸辺で」『関根伸夫 位相絵画Ⅱ』環境美術研究所 1989年)

Lot.127やLot.132のように、6点の出品作品も表面の被膜が変換され、和紙が鮮やかな金箔やグラファイトなどによって覆われています。このように和紙の表面を今見えているものとは別の状態に変形させることで、鑑賞者の空間認識を刺激し、新しい世界との出会いを促すということを関根は意図したのでしょうか。しかも、和紙の総面積は増減していないので、作品はつねにもとの表皮(和紙)に戻る可能性をはらんでいます。そこにあるのは、あの《位相―大地》にも共通する論理であり、生涯変わることなく関根作品の核であり続けた「もの派」の思考であると言えます。

残念ながら、《位相―大地》は現在写真や画像でしかみることができませんが、「位相絵画」なら関根の理論を目前で体感できます。
下見会場でぜひ実際の作品をご覧ください。
下見会では奈良美智や名和晃平、山口長男、三島喜美代など、そのほかの人気作家たちの作品もご覧いただけます。
下見会・オークションスケジュール、オンラインカタログはこちら

なお、ご入札は、ご来場のほか、書面入札、オンライン入札、電話入札、ライブビッディングなどの方法でも承っておりますので、お気軽にご参加ください。
新型コロナウイルスの感染予防対策をしっかりと行い、皆様のご参加をお待ちしております。

(佐藤)