夭折の洋画家たち 松本竣介と古賀春江


こんにちは。
本来なら一年で一番寒い時期のはずですが、今年の冬は暖かい日が多いですね。皆様のお住いの地域はいかがでしょうか。
新年のご挨拶が遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2/1(土)は今年最初のオークションとなります、近代美術/戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡを開催いたします。
今回は出品作品の中から、30代という若さでこの世を去ったことから、「夭折の画家」とも呼ばれる二人の画家の作品をご紹介いたします。


   
   241 松本 竣介

   《男の横顔》
    22.5×15.5cm
            板・油彩 額装   
            東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付   

            落札予想価格
            ¥2,000,000~¥3,000,000


          松本竣介(1912-1948)は、東京渋谷に生ま
          れ、少年時代を岩手で過ごしました。13歳の
    時に病気で聴覚を失いましたが、画家を志し、
          1929年に上京。太平洋画会研究所に入所し、
          1935年第22回二科展に初めて出品して入選し
          ます。この頃より絵画制作の傍ら、雑誌『雑記
                                                                                 帳』を刊行するなど、画家の立場から社会に対する発言を積極的に行いました。1943年には、麻生三郎らと新人画会を結成。戦時下の美術活動や画壇のあり方を模索していきますが、病に倒れ、36歳の若さで早世しました。戦前から戦後に至る困難な時代、都市の風景とそこに生きる人々の姿を、純粋な眼差しと豊かな抒情で捉えた画家です。

竣介は、画業を通して本作のような人物の頭像を多く描いています。男の横顔を捉えた本作は、太い輪郭線、絵具を薄く幾層にも重ねたマチエールが、ルオーの影響をうかがわせる一点です。深く澄んだ青は、都会の雑踏をモンタージュの手法で描いた「街」シリーズでも使用された色。この繊細な色調と、大胆な線、簡潔なフォルムが混然となって、画家の詩情を色濃く伝えています。

 

         
        245 古賀 春江
       《ダリヤなど》  
          50.0×38.0cm
          紙・水彩 額装
         大正14(1925)年
         左下にサイン
         東美鑑定評価機構鑑定委員会鑑定証書付
     
       ・『古賀春江―前衛画家の歩み』
          (1986年/石橋美術館、ブリヂストン美術
              館)№77
       ・『古賀春江―創作のプロセス 東京国立近
              代美術館所蔵作品を中心に』
   (1991年/東京国立近代美術館)
    p.52・参考図版

  落札予想価格 ¥2,000,000~¥3,000,000

福岡県久留米市の仏門に生まれた古賀春江(1895-1933)は、画家の道を目指して17歳で上京。太平洋画会研究所、日本水彩画研究所で学び、水彩と油彩の制作に力を注ぎました。1917年第4回二科展に初入選し、1922年の第9回展では二科賞を受賞。同年、若手作家たちによる前衛グループ「アクション」の結成にも参加します。1929年には二科会員となり、精力的に制作に励みますが、病のため38歳で早世しました。自ら「前衛」を標榜し、セザンヌ風の水彩画、キュビスム、クレー風、シュルレアリスムなど、西洋絵画の最新の動向を積極的に取り入れ、抒情的で幻想的な作風を展開した画家です。

大正14(1925)年作の本作には、《花》(1925年頃作・石橋財団アーティゾン美術館蔵)と題された類似作品が存在するほか、東京国立近代美術館には、技法や作風の異なる様々なヴァリエーションとなる作品が所蔵されています。本作では、花瓶に生けた花々のかたちを円や半円形にまで単純化し、赤いダリヤを際立たせるように明るく爽やかな色面を配置した点に、キュビスムや抽象絵画の構成に対する古賀の強い関心をうかがわせます。また、作品に表われた自由で生き生きとした雰囲気は、翌年から始まるクレー風の時代を予感させるものと言えるでしょう。

松本竣介、古賀春江の作品が当社のオークションに出品されるのは、比較的珍しいことです。ぜひ下見会で、惜しくも若くして散ってしまった二つの才能に触れてください。
オークション・下見会スケジュールはこちら

皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(佐藤)