前回のジャーナルに引き続き、ジュエリーの加工を行う職人さんにスポットを当て、美しいジュエリーの裏側へと迫ります。

シンワ(以下、S):そもそも、ジュエリーを購入する際に、加工というか、作りの良し悪しがわからず、石や貴金属、デザインばかりを重視してしまうのですが、作りの良さはどうやって判断すればよいのですか。
― お見せできる例があると良いのですが、受注生産なもので在庫がなくて…。例えば、これはワックス※1の状態なのでイメージが沸きにくいかもしれませんが、こちら(写真@)は裏の部分がそのまま抜けているというか剥きだしなのに対し、こちら(写真A)は内側にもう一枚、貼ってあるのがわかりますか?難しい技術ではありませんが、こういうものは多少手間がかかっています。それから透かし(写真B)※2が入っていたりするものは、細かい作業を要しますね。

※1 原型をもとにゴム型を作り、そこへワックス(ろう)を注入して作ったもの。
※2 前回のジャーナルでは「千本透かし」と「孔雀透かし」という技術を紹介しました。
S:(写真@を手に取りながら)こちらはコスト削減のため、ということですか?
― そうです。それに、一工程ではできませんからね。こういった部分は裏返してみないとわかりませんから、店頭などで手にする時に裏も見るようにするといいですよ。
S:裏を見ることもそうですが、当社のジュエリーアドバイザーに、バランスを見るのが大切だと言われたことを思い出しました。例えばリングの場合、円を正面から見たとき左右対称かどうか、厚みに差がないかどうかなど、言われてはじめて気が付いたことも多く、いかに細かい部分を見ていないかを思い知らされたことがあります。
― 洋服の場合は裏地や生地、縫い目など細かいところを見ればわかるのでしょうが、貴金属はなかなかわかりにくいかもしれませんね。作りの良し悪しがわかるようになるには、ジュエリーを手にとって見比べていくのに限るのでしょうね。
S:ジュエリーを手にしても、その表面的な美しさしか見ていないものなんですよね。
それから、今回はじめて制作過程を拝見し、予想以上に手の込んだ作業だということを知り、ジュエリーに対する見方が変わりました。
― 作っている段階は実は汚いでしょう?(笑)例えば鋳造する際は、一見機械がやっているようで、地金の状態など諸条件がぴったり合わないと出来ないですし、それぞれの過程でノウハウはあります。でも、何度も失敗して覚えていっただけのことで、誰でもできることなんですよ(笑)
S:いえいえ、とんでもありません。それにしても、熟練した技術をお持ちなだけでなく、リスクを背負って制作されていることに驚きました。
― 地金に関して言えば、常に最高の状態のものが使えるとは限りませんし、溶かす度に1パーセントずつくらい減っています。安い素材であれば失敗も許されますが、金の場合などはそうは言っていられません。それから新たに合金を開発しようにも、費用の都合上実験できないのが現状です。例えば金にアルミを入れると紫色になるのですが、そのままだとアルミが入っていかないし、金属としてはもろいので、何度も実験をしなければなりません。ですが、実験するうちに金がなくなってしまいますからね。身を削りながらの制作のため、若い人がやりたがらないのも仕方がないのでしょう。これを何百年とやってきたヨーロッパはすごいですよね。
S:ヨーロッパと日本ではシステムなどに違いがあるのでしょうか。
― 例えばドイツではマイスター制度※3があります。学校の教育と職場での訓練が一緒になっており、社会的な制度として国に認められています。日本にもジュエリーの専門学校はあり、自分もそこで講師をしていたことがありますが、現場での訓練はまた別物ですね。それに、日本ではマイスターのような立場であっても、社会的地位は低いのが現状です。伝統工芸も同じですね。優れた技術が廃れないよう、頑張っている伝統工芸師の友人もいます。
※3 マイスターとは親方、名人を意味し、国家試験に合格した職人としての最高位。マイスター制度とはドイツで生まれた熟練した技術者を育成するための職能訓練制度。
S:そうなんですね。では最後に、ジュエリーを選ぶ際のポイントがあれば教えてください。
― 良いジュエリーにたくさん触れて、ブランドや流行ではなく、自分に最もふさわしいと思うものを納得して選んでいくことではないでしょうか。
S:ありがとうございました。