1月11日〜13日にかけて、神楽坂にあるアグネスホテルアンドアパートメンツ東京で、今回で4年目を迎えるアート@アグネスアートフェア2008(以下アート@アグネス)が開催されました。
昨年のジャーナルでもご紹介しましたが、更にパワーアップしたこのイベントの事務局を、お1人で運営された市川靖子さんに、アート@アグネスについて、また、ご自身の活動について伺いました。
アートアグネスの概要についてはこちらをご参照ください。
シンワ(以下、S):今日はお忙しいところありがとうございます。まず市川さんご自身のことについてお聞きしたいと思います。ユニークな経歴をおもちのようですが?
市川(以下、I):(笑)そうなんです。実は私、学生のころから某ギャラリーでスタッフとして働いていたんです。そこで学んだこと、お知り合いになった方々は私の財産とも言えるのですが、ある時「アートはもういいや・・・」となってしまって。で、「私が本当に望む時が来たら、またアートの仕事はできるだろう。」と考えて1度一般企業に就職しました。その間は美術館にもあまり行きませんでしたね。
S:そんな生活からアートに戻ったきっかけは?
I :2年が経って、「そろそろギャラリー巡りを再開しようかな」という気になりました。それで、ある日六本木のレントゲンヴェルケのドアを開けたらオーナーの池内さんと鉢合わせして。そうしたら池内さんが開口一番「お前いいところに来た!明日からうちで働け」と(笑)。それで、アートの世界に戻ることになりました。
S:(笑)そうなんですか。
I :えぇ。池内さんは何でも自由にやらせてくれる方で、以前からギャラリーとは別に仕事を受けていたパブリックアートのコーディネートにも理解を示してくれたおかげで、色々な方向に仕事が広がっていきました。
S:美術の神様に愛されているのかもしれませんね。
さて、話題をアート@アグネスに移したいと思います。第4回目を終えての手応えなどお聞かせ願えますか。
I :そうですね、今回は前回よりひとつひとつのギャラリーの作品をじっくり観て、“購入する”という決断まで持っていく流れをうまく作れたという点が非常によかったと感じます。各出展ギャラリーとも平均して8割以上が売約したようです。
S:弊社社長の倉田も、「昨年のファーストチョイス(一般オープンに先んじて作品を観て購入できるプログラム。招待制。)の開場待ちをしていたのは、自分含め2人きりで、アートバーゼル(世界最大のアートフェア)とは随分雰囲気が違うと感じたが、今年は大行列になっていて、いよいよ日本にも本格的な波がやってきたのか?と思った。」と話していましたが、実際のところどうだったのでしょうか。
I :確かに、購買意欲は高まっているのではないでしょうか。一般オープン以降にいらした方は、目当ての作家の作品が既に完売していてガッカリというケースもあったと聞いています。
S:それはすごいですね。台湾など海外からの来場もあったそうですから、いよいよ日本のコンテンポラリーアートが本格的に注目されつつあるのかもしれませんね。
前回と異なり、事前予約制にしたことも好調な売り上げに関係しているのでしょうか。
I :昨年は、とにかく「何か面白いことをやっているぞ」という雰囲気を作り出すことに注力しました。結果4500人もの来場があり、その目論見は非常に成功しました。
でも一方で、ホテルの客室ということもあって会場がスシ詰め状態、作品をじっくり観て購入するどころではない。という事態が起きたのは残念なことでした。
そこで今回は、事前予約制にして入場数を絞りました。結果来場者数は2500人と落ち着きましたが、代わりに、それぞれのギャラリーをゆったり観ていただける空間の確保ができました。それに伴って購入の決断をし易くなったということはあると思います。
S:なるほど。ところで、全体の購買意欲が高くなってきたということは、ファーストチョイスの時間に招待されることが、お目当ての作品を確実に購入する近道になりそうですね?
I :その通りです。ギャラリーに通ってオーナーやスタッフと仲良くなって、ぜひインビテーションを手に入れてください(笑)。やはり狭き門ですから。ファーストチョイスの時間は、他の日程と異なり、アートを所有する意欲の高い方がほとんどですから独特の熱気がありますしね。
S:そうですね。私たちもファーストチョイスにお邪魔したのですが、お顔を拝見したことのあるコレクターも多く、それを感じました。
I :他の日はもう少し「何かやってるな」という感じで来た方と、「買いたい」という方が混ざっていたのではないかと思います。
S:そうなんですか。
アート@アグネスは、ホテルの部屋という均質な空間がそれぞれのギャラリー独特の雰囲気に染められていて、どの展示も面白いのですが、市川さんご自身が、個人的に特に気に入った展示はありましたか。
I :う〜ん、個人的に買ってみたいなと思わせたのは “アラタニウラノ”の展示です。手頃な作品を揃えていたのも良かったですし、ベッドの上に額を並べた展示方法がドラマチックで素敵でした。それから印象的だったのは“ギャラリーソラ”。照明を使って部屋を真っ赤に染めていました。
売るというよりは「作家を宣伝する」ことに主眼を置いていたようですね。
S:確かにギャラリーソラの真っ赤な空間は非常に印象に残りました。
そういえば、今回は出展希望のギャラリーが多く、審査を行ったとか。
I :そうです。ホテルの部屋が31室と限られていることから絞らざるを得なかったので。いくつかの審査基準を設けて、コミッティメンバーと事務局で選定しました。
ギャラリーの質を保つということは、次回以降も神経を使いたい部分です。審査を潜り抜けるという目標を目指すことで、出展ギャラリーのレベルアップにつながればとも思います。
S:なるほど。
I :嬉しい誤算もありました。
今回は客室使用ではなく、地下のホールへの展示参加だったギャラリーカウンタックは、大変若手のギャラリストの運営するギャラリーなので、正直に言ってちょっと心配でドキドキしていたんです。でも当日になってみると、作品は完売。ホテルのオーナーはじめ、お客様からもとっても好評でした。次回はお部屋を使えるといいね、なんて話をして。
S:今後のアート@アグネスと、ご自身の活動について一言ずつお願いします。
I :アート@アグネスについては、来年もこの時期に開催できるといいのですが。今回の反省も踏まえて、よりよいアートフェアにしていきたいですね。
次に私自身についてですが、今はアートに関われることが本当に楽しいです。いつかまた「もうギブアップ」なんて気持ちになる時がくるかも知れないですけど(笑)。
今後もコーディネーターとして、若い才能を発掘したり、デザイン・ゲーム・建築など、異業種とアートをつなげるパイプ役になっていけたらと思います。
S:ありがとうございました。