印象派の巨匠、カミーユ・ピサロ(1830−1903)。日常的な穏やかな風景を賛美し、温和で親しみやすい作品を多く残すとともに、印象派の画家たちの中における最年長者として、若き日の巨匠たちの指導的立場を担った作家として知られています。今回は9月15日(土)開催の近代美術オークションに出品される、カミーユ・ピサロの「Paysanne avec un ane, Pontoise」をご紹介いたします。
1830年、交易港として栄えた西インド諸島セント・トマス島に、ユダヤ人の商人の子として生まれたカミーユ・ピサロは、画家になるという決意を胸にパリへ渡りました。そこでは、コローやクールベの写実的な風景画に大きな影響を受け、モネやルノワールとともに光の効果を求めて戸外で制作する印象派のスタイルを確立しました。1866年には制作の拠点をパリ近郊のポントワーズに移し、田園地帯の豊かな自然や農民たちの姿を描いていきます。また、1874年から8回開催された「印象派展」では中心的な役割を担い、セザンヌやスーラら、若き日の巨匠たちに父と慕われました。
ポントワーズにて農作業の情景を描いた本作品は、1877年頃制作されたものです。ポントワーズは、ピサロが住居を構え、18年間に渡っておびただしい数の作品を制作した創造の源泉とも言うべき地です。その長閑な風景に魅せられたピサロは、しばしば若い画家たちとともに外光のもとで制作に励みました。これは彼らに影響を与えただけでなく、ピサロにとっても刺激的で実り多き交流となったといいます。こうして生まれた作品は、おもに都会の風俗を描いた印象派に、農村の日常風景というもう一つのテーマをもたらしたのです。