ドクメンタはドイツ・メルヘン中央に位置する小さな町、カッセルで5年に一度行われる現代美術の大型グループ展。戦災から立ち直り、前向きに復興に取り組んでいくために1955年に始まったこの展覧会は、今回で12回目を数える。フリデリツィヌム美術館を中心に、カッセル市内の6つの会場を舞台として展示され、街を活性化する催しとしての役割も担う。

とりわけ、「社会彫刻」を提唱し、現代アート史ではもはや神格化されているともいえるヨーゼフ・ボイスが第3回目〜7回目まで参加したことは、ドクメンタの知名度と高評価の確立に大きく寄与した。現在では、ドクメンタに選ばれることは、アーティストとしての成功の代名詞とも言われる。

それだけに、あるテーマのもとに世界中から作家を集めて紹介するという方針で運営されるこの美術展が、美術界の動向に与える影響は大きい。毎回プロデューサーが替わるため、訪れるたびに異なった雰囲気の美術展を観ることができる。今年のディレクターはドイツ人アーティスト、ロジャー・ビュルガーとルース・ノアック。テーマは「芸術が人間生活、社会、教育、ひいては世界にどのような貢献、役割を与えるか」という問題提起形式で、過去から現代までのアーティストが122人が選ばれた。日本人では、“具体”の田中敦子と、1973年生まれの青木陵子の2人が含まれている。
また、今回の出展アーティストは、2人を除いて(そのうち1人は辞退)会期が始まる3日前まで公表しないという秘密主義の方針がとられていた。

しかし、一つ一つの作品が持つ意味、主張などがある以上、今回のような哲学的なテーマに対しての回答を、それぞれに個性の強い作品を並べて展示することで提示しようとする試みは意欲的であるが、一方で、展覧会趣旨が若干伝わりにくいという声もあったようだ。