今回は6月16日(土)開催の近代陶芸オークションに出品される作品の中から、人間国宝・藤本能道の作品とその技を紹介いたします。

東京生まれ。東京美術学校(現 東京藝術大学)工芸科図案科を卒業後、加藤土師萌、富本憲吉に師事し、色絵磁器の技法を学ぶ。前衛的な抽象作品の制作を経て、微妙な色調と卓越した描写力を駆使した色絵磁器を確立する。昭和60年東京藝術大学学長に就任。昭和61年「色絵磁器」の技法により重要無形文化財保持者、人間国宝に認定される。
 

色絵磁器とは、一度焼いた陶磁器に上絵の具で絵を描き、焼き付けるものです。藤本能道は色絵の具を混色して中間的な色や暗色を意識的に使い、新しい表現を試みました。絵画では絵の具の色を塗ってすぐに見ることができますが、磁器での色絵の具の混色は、描画の段階では不透明なグレーがかった色合いをしており、焼成されてはじめて発色します。そのため、鋭い色彩感覚と根気を要する作業といえます。能道は研究を重ねた結果、自然な色合いを表すことに成功したのです。

色絵の具の扱いにおいて独自の手法を編み出す一方で、能道は描法の改革も試みています。師である富本憲吉は、骨描(こつがき)法という、輪郭線を描いてから色絵の具を塗っていく伝統的な描法を用いていました。しかし藤本能道は絵画的な図柄を描くようになると、線は必要に応じて使用し、鳥の柔らかい羽毛などは輪郭線を省いた没骨描法を用いるという描法に移行し、これが作品の特徴となっていきました。

色絵の具と描法における藤原能道の形式をさらに効果的なものとしたのが、晩年期に独自で開発した「雪白釉」、「草白釉」と称する釉(うわぐすり)です。釉とは、磁器の素地の表面に施すガラス質の溶液のことをいいます。「雪白釉」は穏やかな半マット状のもので、白さが強調されています。「草白釉」は雪白釉よりも透明度が高く、わずかに青味がかっています。これらの釉は磁器の肌に潤いを与え、色絵を固着させるという優れた性質を備えているばかりでなく、色絵をより美しく見せています。

さらに藤本能道は、自身で名付けた「釉描加彩」という、新たな表現技法を試みるようになります。これは、直接白磁の上に絵を施したこれまでの色絵に対して、白磁を作る段階で着彩(釉描)した素地に、従来の色絵(加彩)を施したものです。この技法によって表現の幅が広がると同時に釉と色絵とが一体化し、一段と深みのある絵画的な画面構成が展開されていきました。

こうして独自の技法を探求し、それを駆使して色絵磁器の可能性を広げた藤本能道。日本の自然の美を鮮やかに描き出す麗しい世界に、その技と精神が表れています。
 
   
 

■下見会のお知らせ■
6月16日(土)開催/近代陶芸オークションの下見会は下記の日程で開催いたします。
-------------------------------
大阪営業所 (一部展示):
6月8日(金)・9日(土) / 10:00〜18:00

シンワアートミュージアム (全出品作品展示):
6月14日(木)・15日(金) / 10:00〜18:00  
6月16日(土) / 10:00〜12:00 

入場は無料です。 どうぞお気軽にお越し下さい。

カタログ購読のご案内
オークションカタログは、全作品のカラー写真を掲載しております。
現在の美術マーケットを知るためのガイドブックとしてもお勧めいたします。