昨今、日本人ならではの感性で作り出される日本ならではの美学を見直して、世界に向けてそれを発信しようという流れが美術界に起きているようです。2006年には、東京都現代美術館で「No Border 「日本画」から「日本画」へ」展、横浜美術館では「日本×画展」という、若いアーティストによる新しい日本画のあり方に着目した展覧会も開催されました。日本の伝統を参照しながらも、現代社会の世相を反映した作品を制作する若いアーティストが国内外で注目を集めているのです。
今回は、4月14日(土)、第3回目となるコンテンポラリーアートオークションに出品される作家の中から、4人のアーティストをご紹介いたします。

まず、伝統的な日本画を思わせる絵画作品を制作している作家に、町田久美(1970−)と天明屋尚(1966−)がいます。

町田久美は、雲肌麻紙、青墨、岩絵具といった伝統的な日本画の素材を用いて、現代的な不安や混沌を孕んだ超現実的な世界を表現しています。上野の森美術館で開催される「VOCA展」に、2005年に続いて2007年にも選出される他、オランダ、ニューヨークなどでも展覧会が開催され、ニューヨーク近代美術館に版画が収蔵されるなど、海外でも注目を集めています。

今回出品されている「Sato-chan」(落札予想価格100万〜150万円)は、街の薬局の該当で目にする“お馴染み”のゾウのキャラクターが、恐ろしい形相のお面を被っています。日常的な素材を墨で潔く描いたモティーフは美しく整然とまとまっていますが、私たちが認識している社会の像と、現実社会との間の距離、歪みを表現しています。

伝統的な日本画の素材を用いる町田とは反対に、天明屋尚は、アクリル絵の具やトレーシング・ペーパーといった現代的な素材を用いながらも、伝統的な日本画の技法を駆使した絵画を制作します。伝統と現代を巧みに融合させたその絵画を自身で「ネオ日本画」と称し、斬新なテーマと豪華絢爛な色彩で現代社会の様相を写し取り、挑戦しています。

前回のオークションでは、「新形百物語 鳥天狗退治之図」が、落札予想価格を(70万〜100万円)大きく上回る230万円で落札されました。今回は、伝説上の怪物「鵺」(ぬえ)を描いた迫力満点の大作が、落札予想価格400万〜600万円で出品されます。




また、日本人だからこそできる、細やかな手仕事による作品を制作するアーティストとして、須田悦弘(1969−)、あるがせいじ(1968−)がいます。

須田悦弘は、身近にある植物をモティーフにした木彫の作品を制作しています。今回は、兄弟のように仲良く3体揃った、春にぴったりの「土筆」が出品されます(落札予想価格60万〜80万円)。朴の木を用いて本物と見違えるほどに精巧に彫り出され、繊細に彩色された作品は、本物以上の美しさを提示し、素朴な温かみや深い味わいをもたらしています。



あるがせいじは、イメージがプリントされた紙を細かく細くカットし、組み合わせて入り組んだ構造物を作ります。いわば、高度な技術による「紙細工」は、まさに日本人の指先だからこそなせる神技といえるでしょう。中心に向かって沈んでゆく構造を持つ今回の出品作「」968-B」(落札予想価格:10万〜20万円)のように、紙の厚みによって築き上げられた空間は、工芸的技術を高度な「美」の領域に引き上げ、工芸から現代美術へのアプローチという日本的なものを体現しているといえます。




《 シンワアートオークションからのお知らせ 》
次回のコンテンポラリー・アート・オークションは4月14日(土)を予定しております。
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配信日:2007年3月 / Copyright 2007 Shinwa Art Auction, Co. Ltd. All rights reserved.